1. 離れて暮らすふたり
神戸で広告代理店に勤める 47歳の一人娘・美咲。
忙しい日々に追われながらも、名古屋にひとり暮らす 74歳の母・芳子のことが、常に頭の片隅から離れない。
週末の電話で母は「元気にしてるわ」と笑うが、どこか空元気に聞こえる。
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2. 転倒、そしてフレイルの兆し
ある日、母が転んで入院した。幸い大事には至らなかったが、医師から「フレイルの始まりかもしれません」と言われた。
美咲は動揺した。
「このまま名古屋に母を一人置いて、私は神戸で働き続けていいのだろうか」
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3. 娘の葛藤
入院中の母の姿を見て、美咲の胸に重たい思いが広がる。
「もし介護が本格的に必要になったら、私は神戸を離れて名古屋に戻るべき?でも仕事を辞めれば生活はどうなる…」
遠距離介護には交通費もかかる。新幹線代、宿泊代、母の生活費の補助。
頭の中で計算すると、不安はさらに膨れ上がる。
だが、そんな悩みを母に打ち明けることはできなかった。
「お金の心配までさせたら、母はもっと自分を責めてしまうから…」
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4. 母の気遣いと本音
ある日、母が静かに切り出した。
「美咲、あなたに迷惑をかけたくないの。施設に入ることを考えているの」
その言葉に美咲は言葉を失った。
母が自宅を愛していることは、誰よりも知っている。
「庭の花を眺めて最期まで過ごしたい」──それが母の本音のはず。
だからこそ、施設の話は 娘を気遣うための“建前” だと痛いほどわかった。
美咲は胸の奥で叫んでいた。
「そんなこと言わないで。お母さんの本音は、家にいたいことでしょう?
でも、私一人でどう支えたらいいの…?」
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5. 法務の力が開いた道
途方に暮れる二人だったが、在宅での生活を支える方法を探し、行政書士に相談することにした。
「ご本人の意思を大切にしながら、娘さんが離れていても安心できる仕組みをつくりましょう」
そう語られたとき、美咲の心に光が差した。
• 母の意思を明文化した文書
• 財産や契約の整理
• 医療・介護の希望を事前に記録
• 遠距離介護でも負担を軽減する制度の活用
母の「本音」を尊重しつつ、娘の「現実の不安」も和らげる道筋が見えてきた。
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6. 新しい安心のかたち
母はノートにこう書いた。
「私は家で暮らしたい。だけど、もし迷惑をかけすぎるなら、その時は娘に判断を任せます」
それを読んだ美咲は涙をこらえきれなかった。
「お母さんの気持ちも、私の不安も、どちらもちゃんと向き合ってくれる方法があるんだ」
遠距離でも支え合える仕組みを整えながら、二人はようやく同じ方向を見つめることができた。
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法務事務所アソシエからのコメント)
この物語は、娘の現実的な不安(仕事・お金・距離) と、母の本音(自宅で最期を迎えたい)と建前(娘を思って施設を希望する) が交差する中で、在宅看取り法務サービスが「本音と現実をつなぐ橋」となった姿を描いています。
※本物語は、実際にあったご相談や声を参考に再構成したフィクションです。
個人情報には十分に配慮し、特定の人物やご家庭を示すものではありません。
「在宅看取り法務サービス」でよく寄せられるご不安や思いを、多くの方に共感いただけるよう物語にしています。